昭和初期のビール瓶? 大和村山中で見つかる 奄美市名瀬の米田さん

2023年06月16日

地域

大和村山中で大日本麦酒のビール瓶などを見つけた米田剛さん=14日、奄美市名瀬

大和村の山中でこのほど、1906~1949年製とみられるビール瓶など古い瓶が複数見つかった。ビール瓶は刻印などから昭和初期に製造された可能性があり、関係者は「当時の奄美でビールは高級品。誰がどんな理由で山に持ち込んだのだろう」と首をかしげている。

 

瓶はマングースバスターズの米田剛さん(45)=奄美市名瀬=が大和村山中をパトロール中、3カ所で計6本発見した。このうち2本のビール瓶の側面には「DAINIPPON BREWERY」の刻印があり、明治39年~昭和24年に存在したビール製造会社「大日本麦酒」のものと分かった。

 

大日本麦酒は札幌麦酒、日本麦酒、大阪麦酒の3社が合併して設立し、1949年に分割された。うち1社を引き継ぐサッポロビール(本社・東京都)に確認したところ、当時の資料がなく瓶の正確な年代は不明という。底面には「5☆1」「13☆3」と数字と記号が刻まれており、数字が製造年月日を示しているとすれば昭和初期のものと思われる。

 

大日本麦酒の瓶は他にも、長崎県雲仙市の雲仙普賢岳や、小笠原諸島、沖縄県などの旧日本軍が関係する場所で発見例がある。奄美大島では、1921年から45年にかけて瀬戸内町に築かれた旧日本軍の奄美大島要塞跡からもビール瓶が出土しているという。

 

米田さんが瓶を見つけたのは大和村の名音や大和浜の山中で、いずれも集落や道路から離れた山深い場所。底面に刻印のあるビール瓶2本のほか、1949年から1964年に製造されたサッポロビールの大ビール瓶や、年代不明の「三ツ矢」の紋が刻印された透明の瓶なども同時に見つかった。

側面下部に「DAINIPPON BREWERY」の刻印があるビール瓶

 

大和村文化財保護審議会の中山昭二会長(69)は「ビール瓶が戦前戦中のものならば、当時の奄美で民間人が飲んでいたとは考えづらい。旧日本軍の関係で奄美に持ち込まれたものだろう」と推測。一方、村の山中に軍が駐留したという記録はなく、見つかった本数も1カ所につきそれぞれ2~3本と少ないため、「昭和20~30年代の林業関係者か、山で神事を行うノロなどが空き瓶を水筒や酒の入れ物として使ったのではないか」と話した。

 

米田さんは「ビール瓶一つでいろいろな話が膨らんでいって面白いし、誰がなんのために使ったのかも気になる。もし貴重なものだったらぜひ博物館などに寄贈したい」と話した。